つながるコラム「絆」 vol.92 飯南町 ・ 戸田瞬介さん

雲南地区本部

パプリカで盛り上げ、仲間と地域を支えたい

戸田瞬介さん (37歳)

雲南地区本部

飯南町のブランド野菜・パプリカ

きれいな水と空気に恵まれた高原地帯・飯南町。豊かな風土をいかして多様な農作物が作られる中、近年特に注目されているのがパプリカです。新規就農を応援するリースハウス事業や選果場の開設など、町が地域をあげてパプリカ作りを後押し。この10年で栽培農家が増え「いいなんパプリカ」として県内外に出荷しています。農業への志を抱き移住した人たちも注力。現在は、地元農家と新規就農者を合わせて10軒ほどで生産されています。  戸田瞬介さんもパプリカ農家の一人。飯南町の農家に産まれましたが、外の世界を見るために大学進学は県外を選択。卒業後は別の仕事をしていました。長男としての使命感から家を継ぐことを決め、20代半ばで島根県立農林大学校に入学。のちに奥さんとなる佳代さんと在学中に出会い、一緒に飯南町へ。父親の所有する農地にビニールハウスを建て、夫婦で農業を始めました。

JAの働きかけで市場を県外へ拡大

就農してすぐに作り始めたのはトマト。農業研修の際に地元のトマト農家でお世話になったことがきっかけでした。しかし作業の手間に対して単価が見合わない状況が続き、ハウスを増設するタイミングでパプリカの栽培にシフト。現在は9棟のハウスでマベラ、アルサモラ、ボリダーノなどの4品種を育てています。  「パプリカはひとつの株から30個程度しか収穫できません。ピーマンと比べて圧倒的に効率が悪いのですが、単価が良いんですよ」と戸田さんは話します。スーパーなどに出回るパプリカは韓国などからの輸入ものがほとんど。国産は全体の5%程度で、競合が少ないのもポイントだそうです。戸田さんが栽培を始めた当時は、飯南産パプリカの市場は県内が中心でしたが、JAが働きかけ2020年頃から大阪市場でも取り扱われるようになりました。戸田さんは「他の産地で収穫しない時期にも飯南町では出荷できるので、結構頼りにされているみたいですね」と話します。

夏の暑さに耐えながら高品質の実を育てる

毎年2月に種を蒔き、育苗をスタート。苗は自家栽培用だけでなく地元農家が使うものも作り、JAに卸しています。戸田さんは「健康な苗を育てなければならないので最も気を遣う作業です。水の管理など慎重に行なっています」と話します。4月中旬から定植、5月に芽かき、梅雨入り前後に誘引作業。出荷は7月中旬から11月までと長期にわたります。  最近の悩みは夏の暑さ。「早い時期から気温が上がると花が落ちてしまいます。梅雨明けのころからハウスを遮光しますが、それでも暑い! 一方で、きれいな色に育てるためにはある程度の高温状態も必要。ハウスの中がサウナ状態になるので本当に大変です」と戸田さんは話します。暑さがピークを迎える時期は、収穫作業を明け方からスタート。気温が高くなる昼前から休憩に入り、午後2時ごろから再開しています。  戸田さんの父親は今も現役農家で、戸田さん夫妻とは全く別の作物を手掛けていますが、最近はトウガラシ栽培を一緒に進めています。露路で栽培できあまり手がかからないのが魅力だそう。出雲市に住む佳代さんのご両親も時々手伝いに来てくれるそうです。

地道な努力で収量アップ、仲間と地域を支えたい

年々パプリカ農家が増え、産地として盛り上がっている飯南町。戸田さんに今後の目標を聞くと、「とにかく収量アップですね」と実直な答えが返ってきました。「若い新規就農の人たちは、ブランディングなど新しい取り組みに力を入れています。私はそういったことはできないので、たくさん出荷することで地域のパプリカ生産を支えたいです」と意気込みを語ってくれました。
取材時にご夫婦が着ていたのは「いいなんパプリカ」のエンブレムが入ったポロシャツ。飯南町がデザインを公募して作ったブランドのシンボルで、パプリカの袋にもプリントされているそうです。佳代さんは「町を上げてこんなに応援してもらえるんですから、頑張らないといけませんね!」と笑顔を見せました。



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