つながるコラム「絆」 vol.96 斐川町 ・ 森脇康博さん

斐川地区本部

米・麦・大豆に続く 斐川の第4の作物 ハトムギ

農事組合法人おきす 代表理事 森脇康博さん

斐川地区本部

斐川の〝第4の柱〟として導入

 斐伊川に生み出された肥沃な大地が広がる出雲平野。四季を通じてさまざまな農作物が作られています。土地利用型作物としては米・麦・大豆が3本柱となっており、2年3作による営農体系が定着しています。
 そこへ1970年代後半に導入が試みられたのがハトムギの始まりです。栽培実証が行われましたが、当時の品種「岡山在来」は成長すると草丈が2m以上にもなり、風が強く吹いた程度で脱粒するなど、栽培が困難でした。さらには台風によってほとんど脱粒してしまう事態に。湿潤な水田地帯でも育ちやすいというメリットはありましたが、栽培普及を断念。2006年には、品種改良が進んでウィークポイントも改善され、健康ブームも相まって斐川町では米・麦・大豆に加えハトムギを第4の土地利用型作物として位置付け、栽培が広まっていきました。

 農事組合法人おきすでは、2006年からハトムギの生産を開始。代表理事の森脇康博さんは「麦や大豆の播種機、汎用型コンバインがそのまま使えるので、設備投資があまりかからず始められるのが魅力でした」と振り返ります。ハトムギに含まれる「ヨクイニン」に美容・健康効果があるということで需要が拡大していったことや2009年に当時のJA斐川町が大豆・ハトムギの乾燥調製施設を整備したことも追い風になったといいます。

水と肥料がたっぷり必要なハトムギ

同法人では5月下旬から6月中旬にハトムギの播種を行います。森脇さんによるとハトムギはもともと〝肥やし食い〟。品種改良されたおかげでさほど難しい作物ではなくなりましたが、肥料がたくさん必要になるため、堆肥と化成肥料をバランスよくしっかり入れて土づくりをする必要があるそうです。
 草丈が30センチ程度になるまでに1カ月半程度かかります。そこからは成長が早くなり、8月になる頃には1.5〜2メートルほどに。この期間の成長には水が大量に必要になります。「今年は空梅雨だったのでパイプラインで水を入れていました。8月になっても雨が少なくダムの取水制限が始まり、心配事の多い夏でしたね。なんとか乗り越えられましたが・・・」と森脇さんは振り返ります。

 毎年気になるのは、アワノメイガの幼虫が茎の中に入って枯れてしまう被害や白葉枯病です。7~8月に基幹防除を2回施しますが、草丈が1.5メートルほどになると畑に機械を入れることができないため、この時期に害虫が大量発生すると対処できないのが悩みどころ。今年は大きな被害はなく、10月中旬の収穫期を無事に迎え、まずまずの収穫量が得られました。

産地の威信をかけて収量を保ちたい

 健康ブームの波に乗り、作付面積を拡大し、多いときは23ヘクタールで60トン超生産していましたが、コロナ禍でニーズが減ったため抑制する方向にシフト。この2、3年でまた国産ハトムギが求められるようになったため、同法人では増産を検討しています。
 しかし、ここへきてまた新たな問題が。「令和の米騒動で米価が急激に上がった。低米価から価格が上がったのは生産者にとって好ましいが、これまで麦とハトムギ2作で米1作分を超えるくらいの販売金額を得られていたが、昨今の米価高騰を考えると、水稲の面積を増やしたほうが経営的には良いんですよ」と森脇さん。しかし、減産してしまうと、ハトムギなど国産を扱っていた卸、食品メーカーは輸入に頼らざるを得なくなります。「約20年かけて『斐川産のものがいいね』と言って需要が増え扱ってもらえるようになる中で減産すると相手にしてもらえなくなってしまう。さらに国の水田政策がどうなるのか・・・」と森脇さんは悩みを吐露します。

 斐川町ハトムギ部会に所属している生産者、営農法人は10軒。病害虫被害や雑草対策から単収が不安定となり栽培面積が減少傾向あります。森脇さんは「ハトムギのニーズは高くなっていくでしょう。安定供給が望まれる中で、斐川町全体で収量を確保していきたいですね。今は46~48ヘクタールで80トン前後。産地としては100ヘクタールが理想です。当面60ヘクタールを目標に仲間を増やし、産地の威信をかけて生産量を守りたいですね」と話します。森脇さん自身も、健全な経営を維持しながら栽培面積を調整していきたいと意欲を燃やしています。



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